本書は、人工知能学会誌『人工知能』の連載記事:レクチャーシリーズ「AI哲学マップ」および関連記事を再編集し、書籍化するものです。
レクチャーシリーズ「AI哲学マップ」は、人文系(主に哲学)の研究者・実務者と人工知能分野の研究者・実務者の対談から、相互の知見を共有し集積した先に、「人工知能のフロンティアを描き出す」ことを目的として企画されました。本書では、記事・対談の内容から浮かび上がった下記四つの問いを提示し、これらを軸に対談内容を理解することで、人工知能研究の「現在地」と「方向性」を明らかにし、学問としての発展に示唆を与えます。
問い1 人工知能と人間はコミュニケーションできるのか
問い2 人工知能にとっての“時間”とは何か
問い3 人工知能にとっての“社会”とは何か
問い4 人工知能にとっての“環境”とは何か
記事再編にあたり、人工知能を専門としない多くの方々にもわかりやすく読めるよう、技術解説の補足や挿絵の追加など、内容理解の助けとなる工夫を凝らしました。
https://www.ohmsha.co.jp/book/9784274232848/
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本書の全体像とAI哲学マップ
問い1 人工知能と人間はコミュニケーションできるのか
問い2 人工知能にとっての“時間”とは何か
問い3 人工知能にとっての“社会”とは何か
問い4 人工知能にとっての”環境”とは何か
まとめ:AI研究者と哲学者の対話が生み出すもの
本書の全体像とAI哲学マップ
問い1 人工知能と人間はコミュニケーションできるのか
・人とAIのコミュニケーション(伊藤 亜紗×西田 豊明)
はじめに
人間の身体は思いどおりにならない
「個」に踏み込むアプローチ
人と人,人とAIのコモングラウンドはどうあり得るのか
個性はどこから生まれるのか
・人工知能と言語(石田 英敬×坂本 真樹)
はじめに
文系的な知識体系とサイエンスの手法
人間を中心とした人工知能理解からの転換
人間と同じような感性をもつAI
オノマトペが未知の感覚を見いだす
・哲学者の眼差しと科学者の目が交差する,新たな場所へ(田口 茂×谷 淳)
科学者の目から見た現象を知る面白さ
プラントに響くウォータハンマ現象からコネクショニズムへ
関わり合ってきた現象学と人工知能
ロジックと混沌,人工知能が取り得るアプローチ
哲学と科学の間で見えてくるもの
問い2 人工知能にとっての“時間”とは何か
・ベルクソン的「時間スケール」を軸に新たな知能と意識の構成可能性を探る(平井 靖史×谷口 忠大)
はじめに
「人間とロボットのコミュニケーション」という問いから記号創発ロボティクスへ
油絵と哲学,拡張ベルクソン主義へ
哲学のアプローチとAI研究の交差するところ
「生成する知能」という機構
記号が生成するプロセスをどう捉えるか
「認知的閉じ」の拡張可能性と自由意志
言語と知能,あるいはシンボルの出現とダイナミクス
・SFから読み解く人工知能の可能性と課題(鈴木 貴之×大澤 博隆)
はじめに
科学的アプローチを取り入れた実験哲学
SFの力が可能にするもの
自律的AIは“知能”となるか
問い3 人工知能にとっての“社会”とは何か
・コンピューティング史の流れに見る「人工知能」という研究分野(杉本 舞×松原 仁)
はじめに
コンピューティング史から見えてくるもの
日本における人工知能研究,その初期
「人工知能」という分野はいかに成り立ったのか
人工知能は科学か工学か
新たなフロンティアに向けたコミュニティの在り方
・「社会の中のAI」という視点(日比野 愛子×江間 有沙)
はじめに
技術が“社会的に成立する”とは
社会の中の技術の存在をどう捉えるか
AIのバイアス問題から見えてくるもの
社会における存在としてのAIと倫理
人工知能を考える場をどうつくるか
・人工知能と哲学の“これまで”と“これから”(堤 富士雄×中島 秀之)
はじめに
第二次から第三次AIブームにおける,人工知能と哲学の距離
人工知能の研究者は哲学をどう見るか?
人工知能に哲学は必要か? (AI哲学マップの目指すところは何か)
問い4 人工知能にとっての”環境”とは何か
・変容する社会と科学,そして技術(村上 陽一郎×金田 伊代×辻井 潤一)
はじめに
「東洋と西洋」をどう捉えるか
理解するとは何か
AI研究の未来像
・住宅と人工知能,メタバース(奥出 直人×清田 陽司)
はじめに
ハイデガーの道具論の斬新さとその限界
アカデミアと産業界で挑む不動産×AI
エンジニアリングにおける“ノモス”の必要性
実社会のAIと哲学の関係はどう進むべきか
まとめ:AI研究者と哲学者の対話が生み出すもの